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  福利厚生費で節税 (5) - 健康診断の費用
1. 福利厚生費として認定されるための要件
2. 要件①: 健康診断の対象者が全社員となっていること
3. 要件②: 診断内容が常識的な範囲内のものであること
4. 要件③: 診断費用が会社から診療機関に直接支払われていること
5. 「就業規則」 に健康診断の事項を記載しましょう
6. 「健康診断の規定」 を作成して、更に柔軟に対応!
7. 「一人会社」 の社長の健康診断はOKか?
8. 嘱託医による健康診断は、「給与」に該当するので注意!
9. 従業員の健康保持・増進の観点から、健康診断を導入しましょう


  1.福利厚生費として認定されるための要件  

 健康診断の費用は、福利厚生費として費用に計上することが可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。


健康診断の対象者が全社員となっていること。ただし、年齢による限定は可。
診断内容が健康管理を目的としたものであり、常識的な範囲内のものであること。
健康診断の費用が会社から診療機関(医療機関)に直接支払われていること。

 上の①~③について、以下に個別に解説いたします。

  2.要件①: 健康診断の対象者が全社員となっていること  

 健康診断の費用を経費(福利厚生費)として認められるようにするには、全社員が診断の対象者となっている必要があります。全員に等しく提供されなければ、「福利厚生」とはならないからです。

 「全社員」と前述しましたが、もちろん社員(従業員)だけでなく役員もその対象者になります。社長も「従業員と同等の健康診断」を受診することが可能です (注: 役員のみが在籍する会社の場合は、後述の「『一人会社』 の社長の健康診断はOKか?」をご参照ください)

 また、例えば「40歳未満は定期健診、40歳以上は人間ドックによる健診」といった、年齢などに応じた区分を設けることも可能です。年齢を重ねれば病気のリスクも高まりますので、このようなグループ分けをすることも認められています。

 なお、役員など、特定の地位にある人のみを対象とした健康診断の費用を会社が負担した場合は、税務署から給与または賞与(役員賞与)とみなされ、経費として認められない(損金否認)ばかりか、個人(役員等個人)の所得税・住民税の課税対象になります。


  3.要件②: 診断内容が常識的な範囲内のものであること  

 健康診断の内容が社員の健康管理上において必要とされる程度のものであり、常識的な範囲内のものであることが求められます。一般的に実施されている2~3日程度の(人間ドック)検診費用であり、著しく高額でないものであれば、福利厚生費として認められます。

 なお、役員のみが高額な人間ドック(健康診断)を受けた場合には、会社の経費として認められず(損金否認)、なおかつ役員賞与(役員給与)とみなされ、役員個人に所得税が課税されます。すなわち、法人税の課税&所得税の課税というダブルパンチに見舞われますので、注意が必要です。PET検査などの検査は、著しく高額な検査とみなされる可能性が高いため、会社の健診とは別個に個人で受診しましょう。


  4.要件③: 診断費用が会社から診療機関に直接支払われていること  

 健康診断の費用は、会社が診療機関(医療機関)に直接支払う必要があります。会社が従業員に現金を渡し、社員がそのお金で支払った場合には、経費として認められず、給与課税されます。また、健診費用を従業員が立て替えて、会社が後で現金を支給するようなケースも経費として認められませんので、注意が必要です。


  5.「就業規則」 に健康診断の事項を記載しましょう  

 健康診断についての基本的な事項は、「就業規則」に記載します。「入社時 あるいは 年一回の健康診断を受診しなくてはならない」などの基本的事項を記載しますが、具体的な書き方については、厚生労働省が「モデル就業規則」(PDF / Word)を公開しています(第9章 第54条 - PDF)ので、ご確認ください。

 税務調査では、健康診断の実施のルールについて、就業規則等に書かれているかどうかをチェックする場合もあります。健診の申し込み用紙、領収書、健診結果の種類などを保管(5年間)するだけでなく、就業規則等を作成して、実施基準を明記しておくことが大切ですね。

 ちなみに、労働基準法では、社員数10人以上の会社に就業規則の作成を義務付けています(就業規則がない場合は、労働基準法がそのまま適用されます)。10人未満の会社で、今すぐ就業規則を作るのが大変な場合は、取り急ぎ「健康診断の規程(健康管理規程など)」などを作成し(次項6.参照)、健診のルール作りをしておくといいですね。とはいえ、就業規則を作成して備えておくことにより、健康診断のみならず、労働条件や服務規律(勤務のルール)などにおいても相応のメリットを享受できますので、時間を見て作成することをおすすめします。

参考リンク: 厚生労働省 「モデル就業規則について (ひな形あり) 」


  6.「健康診断の規定」 を作成して、更に柔軟に対応!  

 「2.要件①」の項で 「40歳未満は定期健診、40歳以上は人間ドックによる健診」といった、年齢などに応じた区分を設けることも可能だということをお伝えしましたが、その区分があいまいだったり、毎年コロコロと年齢の基準が変わったりすると、税務調査時に損金否認&給与課税されかねません。

 このため、就業規則(基本的な規則)に健康診断の基本的事項を記載するだけでは補えないような場合は、健康診断の規程(具体的なルール)を作成して色々な取り決め事項を設定すると、柔軟に対応しやすくなります(名称は、健康管理規程、健康診断実施規程、健康診断規程など。あるいは 安全衛生管理規程の一部に記載するなど)

 社内規定なんて面倒だなあと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、会社の実情に合わせてオリジナルの規程を作っておけば、それで済みます。基本的事項、金額、年齢条件(勤務年数の条件)、半日有給休暇取得の有無、会社指定の診療機関で受診といった具体的な取り決め事項を書いておくとわかりやすいですね。詳細な内容を盛り込まない場合、前出の「就業規則」のみで対応すればよいと思います。

 つまり、(社員のためのルールとして作成するのはもちろんですが)税務調査の際に健康診断の実施状況をすぐに説明・対処できるようにするためにも作成しておけば、「損金否認」(=経費として認められない)などのトラブルも回避しやすくなります。ひと手間かけるのが節税のポイントですね。










  7.「一人会社」 の社長の健康診断はOKか?  

 基本的に、事業主(経営者、役員)に福利厚生費という概念はありません。このため、会社の社員(役員)が「社長一人」の場合や、「社長&妻の二人だけ」の場合の健康診断の費用については、一般的に福利厚生費として認められないことも多いようです。ただし、これはケースバイケースのようですので、全く認められないというわけでもありません

 「一人会社」等の場合で、税務署に福利厚生費と認定してもらうためには、将来的に従業員を雇い入れることを想定した「就業規則(健康診断の規定)」を作成するなど、客観的にみて(健康診断の導入は)妥当だと判断できるようなルール作りをして、その上で個別に税務署の窓口で(書類持参の上)問い合わせをすると、認められる可能性も高くなると思われます。ただし、事前の問い合わせでOKと回答されても、税務調査時の実態調査で再度判断されることもあり得ますので、適切な運用を心掛けることが必要です。

 この件について税務署に問い合わせたところ、税務相談センター(電話相談窓口)では 「一般的な回答は難しいので、担当税務署に確認してほしい」とのことで、明確な回答は得られませんでした。また、所轄の税務署の担当者は、「個別に状況を確認して、その上で署内で検討が必要」とのことでした。

 健康診断は毎年のことですので、経費になるかならないかで、年々金銭的差額が大きくなってきますね。「一人会社」だからといって早合点してあきらめず、社内のルール作りに取り組んで、準備が整ったら税務署に問い合わせてみるのもいいかもしれません。

 なお、法人で社会保険に加入している場合、毎年3月末~4月初旬に 全国健康保険協会(協会けんぽ)から「健診のご案内」が送付されてきます。これを利用すれば、健診費用は3割負担で済みますので、(福利厚生費に該当する・しないにかかわらず)積極的に活用したいですね。


  8.嘱託医による健康診断は、「給与」に該当するので注意!  

 近隣の医院と嘱託医の契約をして、定期的に診療報酬を支払うケースなどは、健康診断(福利厚生費)ではなく、給与の支給に該当します。診療報酬の支払い時に(給与と同様に)源泉徴収をする必要がありますので、ご注意ください。


  9.従業員の健康保持・増進の観点から、健康診断を導入しましょう  

 以上、税法的な観点から、健康診断の費用計上の可否のお話をしましたが、そもそも健康診断は、労働者の健康保持・増進の観点から、会社は健康診断を実施する義務があり社員は健康診断を受診する義務があると法律で定められています(労働安全衛生法 第66条)。

 一般的には、雇入れ時健康診断、定期健康診断、深夜業に関する特定健康診断などがあります。社会保険に加入する法人であれば、一般的な健診なら 3割負担の約 7千円 で済みます。従業員がいる会社の場合は、健康診断を福利厚生のひとつに組み入れることをおすすめします。