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  福利厚生費で節税 (4) - 慶弔見舞金
1. 慶弔見舞金とは
2. 費用計上&仕訳について
3. 支給額はいくらまでOK?多いと否認されるか?
4. 役員・従業員の「家族」にも支給できます
5. 「支給額の基準」を作成する上での その他のポイント
6. 「慶弔見舞金規程」のひな形 (記載例)
7. 会社加入の保険金から見舞金を支給する際の注意点
8. [参考記事1] 災害見舞金品の取り扱いについて
9. [参考記事2] 社外への慶弔見舞金は「交際費」で処理


  1.慶弔見舞金とは  

 社員への福利厚生の一環として、「慶弔見舞金」(けいちょうみまいきん)を支給し、それを経費に計上することが可能です(従業員側でも所得税はかかりません)。 慶弔見舞金 とは、会社が役員・従業員あるいはその家族の慶弔時に支給する祝い金や香典、傷病や被災や傷病の際に支給する見舞金のことをいいます以下の枠内に具体例を記載しました)

 税務上、慶弔見舞金が経費として認められるようにするには、(1) 「慶弔見舞金規程」 などの社内規程をあらかじめ作成し、その規程に従って支給すること、(2) また「社会通念上相当」と認められる額(常識の範囲内の金額)の支給であることが必要となってきます。

 支給することにより、従業員の勤労意欲の維持・向上が図られますし、(社長のポケットマネーではなく)会社の費用として計上することにより、節税の効果も得られます。

 なお、慶弔見舞金を支給する場合は、支給事由を確認できる書類(招待状、公的確認書類、退院証明書、罹災証明書等)を本人から提出してもらい、会社で保管しておきましょう。また、会社側で慶弔見舞金受給申請書を用意し、必要事項を記入してもらい提出を受けましょう。これらの確認書類を備えておけば、税務調査でトラブルにならずに済みます。


慶弔費
  (1) 慶事(祝いごと)での御祝い金など
例: 結婚祝い金(本人、本人の子供
出産祝い金(本人、配偶者)
誕生祝い金(本人)
成人祝い金(未成年の従業員を想定する場合)
自社の創立記念日の飲食費(全従業員に一律支給する場合)
その他 御祝い金、祝い品など。
  (2) 弔事(死亡・葬儀などのおくやみごと)に対する死亡弔慰金など
例: 御香典及び御仏前(本人、本人の家族)
葬儀用の花輪(本人、本人の家族)など。
見舞金
  被災時のお見舞金、傷病時(ケガ・病気による入院等)の見舞金
例: 災害見舞金(本人)
傷病見舞金(本人)など。


  2.費用計上&仕訳について  

 慶弔見舞金は、「福利厚生費」(経費)の科目で仕訳し、会社や個人事業の費用として計上(損金計上)します。シンプルな仕訳ですね。

例:従業員に「結婚祝い金」を支給した。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
福利厚生費 30,000 現金 30,000


  3.支給額はいくらまでOK?多いと否認されるか?  

 慶弔見舞金の支給額については、特に厳格な決まりはありません。会社で独自に適正な金額を設定すればいいのですが、前項記載の通り、会社であらかじめ 「慶弔見舞金規程」 を作成しておき、その規程にのっとって「決まった金額」を支給することが大事です。金額の相場は、以下のとおりです。結婚祝金なら、1~3万円程度といったところです。一参考にしてみてください。常識の範囲を超えない程度の金額(社会通念上相当と認められる額)に設定しておけば、後々の税務調査でトラブルにならずに済みます。


種類 支給額 (一例) 相場
結婚祝い金 3万円 1~3万円
出産祝い金 1万円 1~3万円
傷病見舞金
(入院見舞金)
業務内 業務外私傷病 業務内 業務外私傷病
1週~1か月 2万円 1万円 3万円程度 1万円程度
1か月以上 3万円 1万円
弔慰金 本人 10万円 5~10万円
(業務内と業務外の区分を規定する会社もあります)
配偶者・子供 5万円 1~5万円程度
父母・義父母 3万円
災害見舞金 全焼・全壊 10万円 本人の住居の場合、
2~10万円程度
半焼・半壊 5万円

 ただし、税務調査で「社会通念に照らして、ちょっと高いんじゃない?」と判断された場合、社会通念上相当と認められる額を超えた分については、「従業員への賞与(あるいは給与)」を支給したものとみなされ、(従業員個人の)所得税の課税対象となります。また、役員の場合ですと、超過分は役員賞与とみなされ、会社の経費として計上できないばかりか、所得税の課税対象にもなり、ダブルで打撃を受けますので、金額を設定する際は慎重を期した方が良いですね。


  4.役員・従業員の「家族」にも支給できます  

 慶弔見舞金は、役員や従業員だけでなく、役員・従業員の「家族」にも支給することができます(家族のお祝いに対しても支給できます)。ご家族のお子さんの結婚祝い、奥様やお子様の傷病見舞金、ご家族の弔慰金(香典)など、目的に合わせて支給が可能です。なお、支給対象者が役員・従業員本人でない場合は、役員・従業員よりも金額を少なくするのが一般的です。














  5.「支給額の基準」を作成する上での その他のポイント  


 支給は、役員・従業員ともに不公平の無いような基準を設けるようにしましょう。極端な例ですが、例えば役員の家族に誕生祝いを支給していながら、(自分とは親戚関係にない)従業員の家族の誕生祝いを支給しないのは、税務上も道徳的にも完全にアウトです。社長子息の結婚祝いだけ多く支給するのもアウトです。経営者一族だけがオイシイ思いをするような偏った福利厚生とならないよう、心がけましょう。


 1人会社など、社員が同族(家族)のみで構成されている場合は、税務調査で「お手盛りの賞与(=自分の都合の良いように決めている賞与)」とみなされかねないため、「誕生祝い金」、「創立祝い金」、「その他の祝い金」などのような「(社長自身のための)ゆるめ&甘めの祝い金」はなるべく設定しないなど、厳格な運用をするように心がけた方が無難です。


 また、男性3万円、女性2万円といった「性別のみによる区別」は、男女雇用機会均等法違反となりますので、公平性を保つようにしましょう。「○○ハラスメント」とならないような公平な基準作りとなるように心がけましょう。なお、「会社への貢献度の度合い」という観点から、勤続年数や役職で 金額の区別 をすることは、問題ありません。


 慶弔見舞金は、あくまでも福利厚生の一環ですので、会社経営に支障の出ない金額に設定しておく方が無難です。また、災害見舞金の金額については、会社周辺での地震による被災の場合、社員の大半が被災することになり、加えて会社再建費用も必要とする中、予想以上に資金負担が重くなる場合があります。このため、見舞金の金額の明示は避け、被災時の状況に応じ、その都度委員会など設置して決定するという方法を採用するのも一案かと思われます。


 兄弟や親子で会社に勤務している従業員がいる場合、香典等の重複支給を避けるため、(経理担当者の混乱を避けるべく)規程の終わりの方に「重複支給の禁止」の条文を付け加えておいても良いと思います(下記ひな形参照。不要であれば、削除して構いません)



  6.「慶弔見舞金規程」のひな形 (記載例)  

 「慶弔見舞金規程」のひな形(記載例)を、別のページに作成しました。ご活用いただければ幸いです。
「慶弔見舞金 規程」の記載例 (新ウインドウで開きます)


  7.会社加入の保険金から見舞金を支給する際の注意点  

 「従業員の傷病時に備えるべく会社が保険に加入している場合」に注意すべき点があります。例えば、従業員が病気等で入院し、保険会社から 10万円 の保険金を受け取ったとします。その一方で、社内の「慶弔見舞金規程」で傷病手当金を 3万円 に設定していた場合、規程通りに3万円を支給するのなら問題ないのですが、従業員の見舞金として「保険金全額の10万円」を従業員に支給すると、差額の7万円は傷病手当金(経費)として税務上認められず、「従業員賞与の支給」とみなされる可能性があります。

 すなわち、税務上においては、保険金の受取額(10万円)は 単なる益金の計上 (雑収入・雑所得)であり、福利厚生費として損金計上する傷病手当金(見舞金 3万円)とは「別の取引行為」であるとされているということです。保険金を受け取ったからといって、その全額を従業員に支給するのではなく、 「見舞金は 慶弔見舞金規程 にしたがって支給してくださいね」 ということです。両者は「ひも付きの関係」にはなっていませんので、経理処理を行う際はご注意ください。


  8.[参考記事 1] 災害見舞金品の取り扱いについて  

 2011年の東日本大震災の被災で、国税庁に「災害見舞金品」に関する問い合わせが数多くあったようで、同庁でもページを割いて基準・区分などについて解説しています。以下に、その内容をまとめてみました。

 震災や火災等により、役員&従業員の家屋や家財が損壊した場合、社内規程で「一定の基準」を設けていることを条件に、災害見舞金品を支給することができます。災害見舞金品が福利厚生費として取り扱われるための「一定の基準」は、以下の通りです。


被災した全従業員に対して被災した程度に応じて支給される等、各被災者に対する支給が合理的な基準によっていること
支給する金額が、受給者の社会的地位等に照らし被災に対する見舞金として、社会通念上相当であること
 ①は、役職などにかかわらず、被災の度合いに応じて一定の金額を支給するというものです。例えば、家屋全壊で10万円、半壊で5万円など。②は、「社会通念上相当」とありますので、いわゆる高すぎない金額、平均的な金額であることが求められます。

 この「一定の基準」は、あらかじめ社内の慶弔規程等に定めていたものに加え、東日本大震災の災害をきっかけに新たに定めた規程でもこれに該当します。

(私の個人的見解)
 東日本大震災が起きたとき、災害見舞金について規程で「被害の程度に応じて見舞金を支給」と記載しているだけで、具体的な金額を決めていなかった企業が多かったようです。このような事態に至った場合、その時点で社内の委員会を設けて金額を決定し支給する、というのも一つの方策です。その金額が「社会通念上相当」であると認められる金額であれば、課税されないこととなっています。

参考リンク: 国税庁 「災害に関する源泉所得税の取扱い
従業員等に支給する災害見舞金品


  9.[参考記事 2] 社外への慶弔見舞金は「交際費」で処理  

 社外の得意先に出す慶弔見舞金品の費用は、慰安、贈答のために要する費用に当たることから、「交際費」の科目で仕訳処理します(措通61の4(1)-15(3))。福利厚生費は、原則として社員の福利厚生を図るための費用科目ですので、社外の人には使用できない科目です。得意先に出す場合、相手の社名、住所、氏名、役職、日付、金額など、自社との取引関係が明確に分かるように記録を残しておくようにしましょう。

 なお、経営者と個人的な付き合いがある人で、業務上の取引関係がほとんど無い人に出す慶弔見舞金は、交際費にも該当せず、そもそも経費として認められません(損金否認)ので、ご注意ください。

 余談ですが、災害による被害を受けた人々を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、「寄附金」や「交際費」に該当せず、「広告宣伝費」に準ずるものとして取り扱われます(法基通9-4-6の4)。その人々の中に得意先の従業員が数人いたとしても、同様の扱いとなります。

参考リンク: 国税庁 「取引先に対する災害見舞金等
自社製品等の被災者に対する提供