福利厚生費で節税 – 慰安旅行 (社員旅行)

節税対策&ヒント

福利厚生費となるための要件

社員への福利厚生として慰安旅行(社員旅行)を実施する場合、一定の要件を満たし、常識の範囲内の金額であれば、会社負担分については「福利厚生費」として費用に計上できます。

ちなみに、国税庁では、慰安旅行(社員旅行)のことを「従業員レクリエーション旅行」と呼称しています。会社負担分につき、経費として全額計上できる(なおかつ 従業員個人の所得 と認定されない)ための基本的要件は、以下の2点です(所得税法 基本通達36-30)

【 福利厚生費として認定されるための条件 】

旅行の期間が4泊5日以内であること
(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること)
旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
(工場や支店単位の旅行は、各職場の人数の50%以上が参加が必要)

また、本要件(所得税法 基本通達36-30)には記載していませんが、以前は、「実務上は会社負担10万円程度」が福利厚生費処理の限度と言われていました。

しかし、平成22年に出された国税不服審判所の裁決の事例を元に勘案すれば、「会社負担額の目安は一人当たり5万円から7万円程度」が妥当である(否認される可能性が低い金額)とも言われています。

「事業に差し障りの無い程度の金額(5~7万円)の旅行なら 福利厚生費としてOKだが、余った利益を使って ここぞとばかりにゴージャスな旅行を決行するのは、アウト!」ということですね。豪華旅行は、プライベートで行った方がオドオドしなくて済みますし、身も心もリラックスできますね。

本題に戻りますが、①に記載のとおり、4泊5日を超えて、更に長期の旅行となるものは、福利厚生費(経費)として認められません。また、②にも書かれているように、「実際に参加した人数」が重要になってくるので、当日、病気等で欠席される方もいることを想定しつつ、事前に社員にアンケートを取るなどして、大多数の従業員が参加することを確認してから、旅行を計画した方が良さそうですね。

[ 参考リンク ]

慰安旅行 (社員旅行) に該当しないケース

国税庁が『福利厚生費と認定しない』と明確に示しているケースは、以下の ①~④ になります。否認される場合は、高額部分の差額だけが否認されるのではなく、旅行費用の全額が否認されます。

否認分のうち、従業員の旅行費用分については、「各従業員の給与」とみなされますので、源泉所得税の課税対象となります(更に、ペナルティーとして源泉所得税の不納付加算税も課税されます)。個人に負担が重くのしかかりますので、慎重な取り扱いが必要です。

また、役員旅行費用の否認分については、役員賞与扱いとなるため、法人の経費として認められないだけでなく、従業員同様、所得税の課税対象(+不納付加算税)となりますので、二重の負担になります。ご注意ください。

【 慰安旅行 (社員旅行) に該当しないケース 】

役員だけで行う旅行
取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
実質的に私的旅行と認められる旅行
金銭との選択が可能な旅行

①の「役員だけで行う旅行」の場合、役員賞与とみなされ、会社の経費として認められないばかりか、役員個人に対して所得税が課されます。

「社長と奥様(取締役経理部長)の旅行」といったケースは、否認してくれと言わんばかりの 典型的なNG の例です。ダブルパンチで痛い目に遭いますので、ご注意ください。

②は、明らかに「勘定科目違い」です。福利厚生費は、社内の従業員・役員に対する福利厚生ですので、取引先への供応でしたら「交際費」で処理します。なお、交際費で処理した場合で 且つ その限度額を超えていれば、その超過分は否認されます。

③は、従業員・役員の参加が50%未満の場合が、これに該当します。一部の従業員等のみが参加するので、「私的旅行」ということになりますね。

参加者の役員賞与・従業員給与とみなされ、所得税を課税されます(役員への供与分は、役員賞与扱いなので、経費としても否認されます)

④は、「旅行に出席しなかったら、会社負担分の旅行費用を現金で支給」といったケースなどがこれに該当するかと思います。

現金支給を認めてしまうと、本来の「福利厚生(慰労)」という目的が消滅してしまいますので、NGとなります。従業員の自己都合により旅行不参加となり 且つ 金銭支給をした場合、旅行不参加者のみならず、参加者全員に給与課税されます。

また、会社の業務上の都合により不参加となり、金銭支給した場合、旅行不参加者のみ給与課税されます(休日出勤手当のような扱いですね)。

なお、③と④の役員への供与分は、①同様、役員賞与扱いとなり、法人税課税&役員所得税課税のダブルパンチとなります。