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  社会保険料の処理・仕訳のコツ (2) 
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1. 社保は『翌月徴収・翌月納付』が原則
2. 『翌月徴収』と『当月徴収』の長所&短所
3. 『翌月徴収・翌月納付』の仕訳について
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4. 社保は『当月徴収・翌月納付』でも可
5. 『当月徴収・翌月納付』の仕訳について


  3.社会保険料は、『当月徴収・翌月納付』でも構いません  

 前ページの「1.社会保険料は、『翌月徴収・翌月納付』が原則です」で、従業員から預かる社会保険料は『翌月徴収・翌月納付』とご説明しましたが、当月の給与から天引きして、翌月に納付する『当月徴収・翌月納付』でも問題ありません前ページをお読みになって、「3月給与分
の社会保険料は、3月給与から天引きした方が、期間が一致してすっきりするのに・・・」とお考えになった方もいらっしゃるでしょうし、「えーっ、ウチは当月徴収・翌月納付にしてたよ!どうしよう・・・。」と困惑された方もおられるかと思いますが、それでも構いませんので、ご安心ください。

 確かに、法令では「翌月徴収・翌月納付」と書かれています。また、そのように処理している会社も多いですし、社会保険労務士に処理をお願いしている会社なら、おそらく『翌月・翌月』とされている会社が多いかと思われます。ただし、これは、あくまでも「原則」であって、実際には各会社の自主性に任されているようです。


 私も色々疑問に感じたため、年金事務所に問い合わせてみたところ、 「法律にはそのように書かれていますが、会社が内部的にきちんと管理していれば、特に問題にする事柄ではありません。会社の自主性に任せています。」 とおっしゃっていました。また、 「実際に会社に赴いて調査・審査もおこなっていますが、他の悪質なケースと絡めて問題となっているのでもない限り、『当月徴収』ということ自体が問題に挙げられることはありません。」 ともおっしゃっていました。

 つまり、当月に徴収しても、翌月に徴収しても、最終的に翌月にきちんと納付されていれば、どちらでも構わないということです


 じゃあ、税務署の立場から見た場合、どうなのか?と思い、税務署の「税務相談センター」に 「社会保険料を当月徴収するか、翌月徴収するかで、個人の所得税が若干ズレる場合がありますが、問題ありませんでしょうか?」 と問い合わせたところ、「 あぁ、どちらでも構わないですよ」 「それ(当月徴収)でもOKですよ」 と、なんともあっさりした返答が返ってきました


 それだったら・・・と思い、ダメ押しのつもりで、『従業員の権利保護』という観点から、労働局(労働基準監督署)に問い合わせてみました。 「翌月徴収と法律に書かれているんですが、1か月早めて当月徴収にしたら、従業員の権利上、何か問題があるということになりますか」 ・・・と。回答は、 「権利侵害にはならないですよ。従業員から社会保険料を預かったにもかかわらず、会社がそれを納付しなかったというなら大問題ですが、当月の社会保険料をその月の給料から天引きしたことが問題になることはないですし、今までそのようなことで問題となった話はないですね。」 とおっしゃっていました


 インターネット(Q&Aサイトなど)でこの件を調べると、条文をひっぱり出してきて「当月徴収は違法だ」と断定的に書かれている方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。実務上は、「翌月徴収でも当月徴収でも、どちらでも構わない」ということです。この「当月徴収」のケースに限って言えば、「法令に書かれていない⇒違法ということではない」というのが、最終結論です。

 ただし、今回のお話は、『当月徴収・翌月納付』を積極的に選択してくださいとお伝えしているのではなく、「これから会社を設立しようという方に向けて、「迷い」を払拭するべく解説したもの」であり、また「既に会社を設立して『当月・翌月』で処理を行っていて、現在当惑している経理ご担当者に向けて補足説明をしているもの」です。

 このため、新しく会社を設立して社会保険料を納める場合は、原則に立ち戻って『翌月徴収・翌月納付』を選択しても構いませんし、あるいは当月の従業員の給料から(当月の)社会保険料を天引きしたい場合は、『当月徴収・翌月納付』を選択されても構わないと思います。どちらの徴収方法でも問題はありません。

 『当月徴収・翌月納付』をご選択されたい場合など、もう少し深くご検討されたい方は、お近くの年金事務所や社会保険労務士と、また経理上正しいかどうかがご心配な方は、税務署・税理士などともよくご相談なさってください。


  2.『当月徴収・翌月納付』の仕訳について  

 ちなみに、『当月徴収・翌月納付』の仕訳の流れは、以下のようになります。ご参考になさってみてください(なお、下記仕訳では 「未払給与分の仕訳」 の記載を省略しています。あらかじめご了承ください)。


  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
給 料 (4月給料) 300,000 普通預金 or 現金 262,000
  預り金 ※② 3,000
  預り金 ※② 5,000
  預り金 ※① 30,000
※①: 4月 (当月)の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料を徴収します。
※②: 「源泉所得税」、「市県民税」、「労働保険料(当該仕訳に非掲載)」の天引き分 の3つについては、説明を割愛いたします。


(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、この仕訳は不要です。)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
法定福利費 ※③ 30,500 未払費用 30,500
※③: 4月 (当月)の給料に対する 会社負担分 の社会保険料を費用計上します。
なお、従業員負担分との差額 +500円 は、児童手当拠出金です。

 (休日の場合は、翌営業日 / 銀行引き落とし日)
(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、未払費用の箇所が「法定福利費」になります。)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※④ 30,000 普通預金 60,500
未払費用 ※⑤ 30,500
※④: 3月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(3月25日の天引き分)を納付します。
※⑤: 3月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(3月31日の費用計上分)を納付します。

【5月25日の仕訳は、4月25日と同じ処理のため、記載省略します】

 (休日の場合は、翌営業日 / 銀行引き落とし日)
(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、未払費用の箇所が「法定福利費」になります。)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※⑥ 30,000 普通預金 60,500
未払費用 ※⑦ 30,500
※⑥: 4月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(4月25日の天引き分)を納付します。
※⑦: 4月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(4月30日の費用計上分)を納付します。