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  決算対策で節税 (4) - 短期前払費用を活用する
1. 前払費用とは
2. 短期前払費用の特例を活用しよう
3. 「短期前払費用」適用の要件
4. 「短期前払費用」適用の注意点&該当しないケース
5. 「法基通2-2-14」で規定している内容について
6. 仕訳は、通常の経費計上と同じ!
7. [参考記事] 短期前払費用は、「販売費・一般管理費」だけなのか?


  1.前払費用とは  

 短期前払費用について解説する前に、「前払費用」の定義&原則的な取り扱いについて確認してみることにしましょう。

 前払費用とは、一定の契約により継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時において、未だ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。具体的には、翌期の家賃や保険料などを当期に支払った場合などは、「前払費用」に該当します。経理上は、支払ったときに一旦資産に計上し(前払費用の科目を使用して費用を繰り延べ)、実際に役務の提供を受けたときに 経費に振り替えます(損金に算入します)


  2.短期前払費用の特例を活用しよう  

 前払費用は、原則的には、支払い時に一旦資産計上し、役務の提供を受けた時にその都度費用計上することになっていますが、実務上、細かい経費短期的な前払い分まで期間対応させて繰延(くりのべ)処理を行うと、大変煩雑となってしまいます。

 このため、税務上において、1年以内に期間が終了する「短期前払費用」については、課税上弊害が生じない範囲内で費用計上の基準を緩和し、支払ベースでの費用計上を認めるとしています。つまり、資産計上の処理(繰延処理)を省略して、そのまま損金(経費)として処理していいですよ、ということです(ただし、「収益と対応させる必要がある費用」の場合は、1年以内の短期前払費用であっても 対象外となります。詳細は、4.で解説)

 例えば、(年払いの契約になっている)地代家賃、保険料、借入金の支払利息、(年単位の更新契約となっている)レンタルサーバー代金、独自ドメイン手数料なども、これに該当します。

 なお、レンタルサーバー代金など、「月払い、半年払い、年払い」の選択ができるものについては、当初の契約時に年払いを選択すれば(年払いの契約をすれば)、当期に全額を費用計上できることになりますので、支払い方法を選択可能な場合には、少し配慮して選択してみるといいですね。

 短期前払費用を全額損金に計上することにより、当期の利益を圧縮し、支払う税金を少なくすることができますので、確実な節税効果が得られます(毎期継続適用を行った場合、最初の事業年度のみ効果が得られます)。もちろん、個別の繰延処理(前払費用の計上)も省略できますので、経理上の手間も省けます。決算前に出来る節税対策として、是非実施しておきたいですね。


  3.「短期前払費用」適用の要件  

 短期前払費用として、支払い時に全額を損金算入できるための要件は、次の4つとなります。

【 「短期前払費用」適用の要件 】
一定の契約に基づき、継続的に役務の提供を受けるために支払った費用であること
( ⇒ 前払費用に該当するものであること)
支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものであること
毎期、継続して支払い時に経費に計上(損金計上)すること
ただし、収益と対応させる必要がある費用については 対象外 であること

 なお、賃借料にかかる短期前払費用については、国税庁の「短期前払費用の取扱いについて」のページで具体的な該当事例を掲載していますので、参考になさってみてください。

参考リンク: 国税庁 「短期前払費用として損金算入ができる場合
短期前払費用の取扱いについて


  4.「短期前払費用」適用の注意点&該当しないケース  

 次のようなケースは、「短期前払費用」として 支払った全額を一度に損金算入できません(もしくは 適用できません)ので、注意が必要です。

【 「短期前払費用」適用の注意点&該当しないケース 】
2年分など、1年超の支払いをまとめ払した場合は、一旦全額資産計上(長期前払費用)に計上しなければいけない。
一旦、(長期)前払費用に全額を資産計上(繰延計上)し、役務の提供を受けた時に、その都度費用に振り替える処理を行います。

継続適用することが必要。各事業年度ごとに年払、月払など、コロコロと変更する場合は、認められない。
赤字の時は月払い、利益が多く出た時は年払い 等々、年度ごとにコロコロ変わるケースは、「利益操作」とみなされます。ご注意ください!

月払いの契約になっているものを年払いにする(向こう1年分を前払いする)のは、適用不可
②のケースと似ていますね。③は、契約そのものが「月払い契約」となっているケースで、こういうものを強引に年払いであるかのような扱いにするのはアウトです。

収益の計上と対応させる必要がある費用」の場合は、1年以内の短期前払費用であっても支払い時点でその全額を損金算入することは認められない。
例えば、「借入金を預金や有価証券などに運用する場合のその借入金の支払利息(つまり、借金して株を運用した場合の支払利息など)」などは適用不可。「前払費用」として一旦資産計上することになります。

短期前払費用の「未払い」分は損金算入不可
期末までに支払い済みであることが前提となります。役務の提供を受けておらず、なおかつ未払いなので、(短期前払費用の)特例の適用が不可どころか、そもそも前払費用&経費の計上(損金算入)の対象となりませんね。

継続的な役務の提供でないものについては、対象外。
単発の広告宣伝費等、一時的あるいは期間限定の前払費用などについては、短期前払費用とはなりません。

税理士報酬の年払いは不可。
税理士報酬等は「等質・等量」ではないため、短期前払費用の特例は適用できません。















  5.「法基通2-2-14」で規定している内容について  

 以上、短期前払費用の適用要件などを解説いたしましたが、本項では、その根拠となっている「法人税基本通達2-2-14」の内容ついてご紹介いたします。同通達では、短期前払費用について、次のように規定しています(一部、平易な文章に変えました)

 「前払費用の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った金額を継続してその事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払った時点で損金に算入することを認める。」 としています。

 また、注釈として、 「例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」 とも付記されています。


  6.仕訳は、通常の経費計上と同じ!  

 短期前払費用は、その支払った全額を経費に計上(損金に算入)できるということですから、仕訳は「通常の経費」の仕訳と全く同じ扱いになります。例えば、1年契約の保険料を支払った場合は、

  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
保険料 30,000 普通預金 60,500

と 単純に費用計上の仕訳を行うだけです。短期前払費用という勘定科目があるわけでもないですし、いたってシンプルですね。


  7.[参考記事] 短期前払費用は、「販売費・一般管理費」だけなのか?  

 一般的に、「販売費及び一般管理費」に含まれる費用のうち、短期前払費用の要件を満たすものについては該当する、ということで世間的に意見が一致しています。

 しかし、売上原価(製造原価)に含まれる賃料などの費用が該当するかどうかについては、一部意見が分かれています。インターネットで色々調べてみると、専門家(税理士等)によっては、「製造原価に含まれる工場の家賃については、たとえ要件を満たしていても短期前払費用とするのはダメ」という方もいますし、OKという方もいます。

 そこで、更に詳しく調べたところ、国税庁の「税大論叢 48号」内の「法人税法の損金経理要件について(PDFファイル)」:「第5節 短期前払費用の損金経理要件」の134ページ(PDFの23ページ目)に、次のように書かれているのを見つけました。一部抜粋してご紹介します。

 「 この点について、教授も『短期の前払費用である限り、それが特に営業上重要な費用であるかないかで区別されることにはなっていない。』 と述べており、さらに 『本通達の適用される短期の前払費用は、必ずしも販売費・一般管理費等として期間費用処理されるものに限られない。その費用が製品の製造に直接関連するものであるため、製造原価に算入されるものである場合にも、本通達の適用があるものと解してよい。』 とも述べている」 と書かれています。

 つまり、製造原価中の「短期前払費用」の要件を満たす経費についても、同様に処理してよいということになります。国税庁の論叢(論集)に書かれていることですから、問題はなさそうですね(最終的なご判断は、税務署、税理士等の専門家ととご相談の上でなさってください)。もちろん、製造原価といっても、収益と対応させる必要があるような製造原価中の変動費(材料費、外注費等)などは、短期前払費用に該当しませんので、ご注意ください(材料費の前払い分<手付金>⇒前渡金、材料の未使用分⇒「原材料」などの棚卸資産、外注費の前払い分<手付金>⇒前渡金 etc. )

 ・・・ただし、本項冒頭の税理士のような考え方(製造原価中の家賃はダメ、という意見)の人がいるということは、税務調査等を担当する現場の税務署職員も同じような考え方の人がいる可能性も十分に考えられます。また、工場の(家賃ではなく)機械設備の賃料等については、稼働率に伴う老朽化・陳腐化などの問題もあり、短期前払費用での処理は不適切であるとの見方もあります。製造原価における費用項目について、「短期前払費用」の適用が可能かどうかが気になる場合(明確化したい場合)は、個別に税務署へ問い合わせて 会社と税務署の見解を一致させておくといいですね。