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  決算対策で節税 (1) - 未払費用を拾い出して節税!
1. 「未払費用」 とは?
2. 税務上で 「未払費用」 「未払金」 と認められるための要件
3. 会計上の 「未払費用」 と 「未払金」 の違いについて
4. 税務上での 「未払費用」 と 「未払金」 の区分の扱いについて
5. 未払費用の仕訳例
6. 「未払費用と未払金の区分」 には、色んな見解があります


  1.「未払費用」 とは?  

 会社の営業外の経費は、支払いが確定しているものについては、未払計上(「未払費用」「未払金」の科目を使用)することができます。

 未払費用とは、「本来の営業取引以外の継続的な取引から生じる債務の当期分未払額を 決算時に計上するための経過勘定」のことをいいます。

 もう少し分かりやすく申しますと、営業取引以外の継続な取引によって生じた確定債務であるものの、決算日(期末)までに支払いが到来していないもののことをいいます。これらの費用については、(翌期の)実際の支払い日を待つことなく、当期に未払費用として計上することが可能です。

 未払費用に計上できる経費は、会社負担分の社会保険料固定資産税、従業員給与、水道光熱費、新聞代、事務所家賃(後払いの場合)、保険料、電話代、プロバイダ代など、その他にも色々あります。これらを漏れなく拾い出して、節税しましょう!


  2.税務上で 「未払費用」 「未払金」 と認められるための要件  

 法人税法(第22条第3項)では、損金(=税法上の費用)に算入できる範囲は、「償却費以外の費用で 当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く」と定められています。つまり、「債務が確定している経費(費用)」であれば、損金に算入できるということです。この考え方を「債務確定主義」、「債務確定基準」といいます。

 税務上、「債務が確定している経費(費用)」と認められるためには、以下の3つの要件に当てはまる必要があります。そして、これの要件を満たしている経費であれば、未払計上(未払費用、未払金で処理)してよいことになっています(法人税基本通達2-2-12)

当該事業年度終了の日(=決算日)までに債務が成立していること
 (⇒ 支払い義務が確定していること)
決算日 までに具体的給付をなすべき原因事実が発生していること
 (⇒ 法律上支払う契約があること)
決算日 までに金額の合理的算定が可能なこと
 (⇒ 金額が明らかであること、金額が計算できること)

 つまり、(税務署は)「既に商品やサービスの提供を受けていて(原因事実が発生)、支払金額がカチッと確定されていて(債務が成立、支払いが確定)、請求書が届いていたり支払いの明細が明らか(金額を合理的に算定)になっていれば、経費(損金)と認めますよ」ということですね。


  3.会計上の 「未払費用」 と 「未払金」 の違いについて  

【 「未払費用」の会計上の定義 】
 「未払費用と未払金の区別がよくわからん!」という話を聞きます。私も、最初は紛らわしいなあと感じていました。未払費用は、「企業会計原則注解」 において、次のように定義されています。

 「未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対して、いまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。」 ・・・つまり、未払費用と未払金の違いの箇所をピックアップして申しますと、

未払費用 … 継続してサービスを受ける契約になっていること
 (⇒ 1回限りの単発サービスではないですよ、という意味)

 ということです。この会計上の基準に加えて、前述の税務上の要件(①~③。債務確定基準)を満たせば、「未払費用」ということになります。会社負担分の社会保険料、固定資産税、従業員給与、水道光熱費、新聞代、事務所家賃(後払いの場合)、保険料、電話代、プロバイダ代、支払利息などが挙げられます(なお、これらの個別の費用項目については、今後少しずつ解説していきたいと思います)

【 「未払金」の会計上の定義 】
 逆に、非継続的な役務提供契約、すなわち 「1回限りの単発サービス」であれば、未払金であるということになります。もちろん、未払費用と同様に、税務上の要件(①~③。債務確定基準)も満たす必要があります。例えば、クレジットカードで書籍、事務用品、パソコンを買った場合や、資産を取得して支払いが未払いの場合などは、この未払金に該当しますね。


  4.税務上での 「未払費用」 と 「未払金」 の区分の扱いについて  

【 税務上は、どちらの科目でも問題ないが・・・、継続性が重要! 】
 実は、税務上は、未払費用を使うはずの経費に「未払金」を使っても、特に問題にされません。なぜなら、先ほどの「定義」は、あくまでも会計上の定義(企業会計原則注解)であって、税務上(税法上)の要件ではないからです。

 それよりも、税務上においては、 「一旦、『未払費用』(あるいは『未払金』)の科目を使用したら、翌年度以降も継続して同じ科目を使用しなければならない」 ということが求められます。月によって未払金を立てたり、立てなかったりというのもアウトです。つまり、「継続性」が重要なんです。昔、税務署(税務相談センター)に問い合わせた際も、この継続処理の重要性について説明を受けたことがあります。

 昨年は「未払金」を使用したけれど、今年は「未払費用」を使おうかな?といった、コロコロ変わるような処理は、税務上、問題となってしまいます。このため、例えば、「水道光熱費の未払計上分は、未払費用を使う」と決めたら、その後も継続して「未払費用」勘定を使用し続けることが大事です。







【 日常の経理処理のために会計基準の定義も覚えておきましょう! 】
 とはいえ、普段から、会計上の基準で「未払費用」と「未払金」の区別をしておけば、何か新しい支払いが発生した際にも特に混乱することなく処理できるかと思いますので、この会計上の区分も頭に入れておくといいですね。

 余談ですが、企業会計原則をはじめとする会計基準は、法律ではありませんが、慣習法として法体系の一部に組み込まれている「規範」(=ルール)になります。このため、日常の経理においては、会計基準を念頭に置いて処理することが求められます。


  5.未払費用の仕訳例  

 未払計上できる経費の科目としては、会社負担分の社会保険料、固定資産税、従業員給与、水道光熱費、新聞代、事務所家賃、保険料、電話代、プロバイダ代などがあります。以下のような2パターンの仕訳の方法があります。

 ①の仕訳(毎月末に未払計上するケース)は、毎月の期間損益を反映する処理方法ですので、こちらの仕訳処理を選択している会社も多いようです。期間損益をより正確に計算できますので、試算表を活用した「月次の収支分析」などに役立つ方法です。

 ②の仕訳(支払い時にのみ費用計上&期末に未払計上するケース)は、金額も少額、毎月の金額の変動も大きくない、なおかつ毎月未払計上するのが煩雑である場合に、こちらを採用しているようです。簿記3級の例題などに出てくる方法(現金主義的な仕訳方法)ですね。

【 ① 毎月末に未払計上するケース 】(期間損益を重視した仕訳処理)

 8月分の電話代を、月末に費用計上した(便宜的に月末としました)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
通信費 2,000 未払費用 2,000


 9月5日(銀行引き落とし日)に、普通預金から引き落とされた。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
未払費用 2,000 普通預金 2,000


【 ② 支払い時に費用計上&期末に未払計上するケース 】(簡略化を重視した仕訳)

 8月分の電話代が、9月5日(銀行引き落とし日)に普通預金から引き落とされた。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
通信費 2,000 普通預金 2,000

 3月の決算期末に3月分の電話代を未払計上した。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
通信費 2,050 未払費用 2,050

 翌期首(4月1日)に再振替仕訳(振り戻し処理)をした。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
未払費用 2,050 通信費 2,050


  6.「未払費用と未払金の区分」 には、色んな見解があります  

 「未払費用」と「未払金」の区分の仕方は、前述した「企業会計原則注解」の解釈の仕方によって、(ネット上では)様々な見解が繰り広げられています。例えば、請求書の有無で未払金と未払費用を区分するなど、・・・色々書いてありますね。また、支払期日の到来の有無により、未払費用と未払金を区別している会社もあるようです。

 企業会計原則自体が 法律 ではなく、あくまでも「規範」であることから、このように様々な意見が飛び交う事態になっているのではないかと思われます。 当方では、一般的に広く認識されている解釈をご紹介いたしました。

 一番優先されるべき事柄は、税務上で 「未払費用」&「未払金」 と認められるための要件、すなわち 「債務確定基準をクリアしているかどうかという点であり、これを満たさないと損金算入ができない、ということです。そして、「未払費用」を使用している費用科目は、次年度以降も同じ処理をしなくてはいけない(処理方法をコロコロ変えてはいけない)ということですね。